ケタミンは1970年から日本で使われてきた麻酔薬です。2000年以降、この薬を少量用いると、抗うつ薬で改善しなかった方のうつ症状が、投与から数時間〜数日という短い時間で軽くなることが海外の研究で報告され、注目を集めるようになりました。従来の抗うつ薬が効果を現すまでに数週間かかるのと比べて、これは大きな違いです。米国では2019年に、ケタミンの成分をもとにしたエスケタミン点鼻薬が、治療抵抗性うつ病の治療薬として承認されています。
KAP(ケタミン・アシステッド・サイコセラピー)は、ケタミンを単に「投与する」のではなく、心理的な準備(Preparation)と、体験を日常へつなげる統合(Integration)を組み合わせた治療プログラムです。年齢とともに、脳の回路は使い慣れた道ばかりを通るようになり、考え方にも「コリ」のようなものができていきます。ケタミンがもたらす意識のやわらぎのなかで、その固まった回路から少し距離を置き、自分の内側をあらためて眺める——その体験を、その後の変化の足がかりにしていきます。
※日本において、ケタミンのうつ症状等への使用は承認された適応ではありません(適応外使用)。当院では自由診療として、医師の判断と責任のもとで提供しています。効果の現れ方には個人差があり、すべての方に有効とは限りません。

海外の研究でケタミンの効果が報告されているのは、主に次のような状態です。当院にも、こうした状態の方が多くお越しになっています。
治療抵抗性うつ病 — 抗うつ薬を2種類以上試しても、十分に改善しないうつ症状
PTSD・トラウマ — 過去の出来事が、今も生活に影を落としている状態
慢性疼痛 — 長く続く痛みと、それに伴う気分の落ち込み
不安、燃え尽き — 気力が尽き、日常が回らなくなっている状態
また、成人の神経発達症(ASD・ADHD)の方の心理的柔軟性に対するKAPの効果については、精神科の研究者と共同研究を進めている段階です。現時点で効果が確立しているわけではありませんが、ご関心のある方は初回相談でお尋ねください。

一方で、KAPを受けるために診断名は必要ありません。たとえば、こんなテーマを抱えてお越しになる方がいらっしゃいます。
長く続く気分の落ち込みや、意欲の低下
何年も手放せない考えのくせ、自分を責める習慣
大切な人との死別、喪失の悲しみ
過去の出来事が、今も生活に影を落としている感覚
薬物療法やカウンセリングを続けてきたが、行き詰まりを感じている
人生の転機を前に、自分の内側を深く見つめ直したい
意識の変容体験そのものを目的とする方は、当院のKAPの対象外です。あくまで治療として、向き合いたいテーマのある方にご提供しています。
「薬は飲んでいるけれど、よくなった実感がない」「副作用のほうがつらい」——初回相談で、そうお話しになる方は少なくありません。
SSRIなどの一般的な抗うつ薬は、多くの方にとって有効な治療です。一方で、次のような副作用が知られており、それが続けられない理由になることがあります。
一般的な抗うつ薬(SSRIなど)
体重の増加
性機能への影響(性欲の低下、勃起の障害、オーガズムの障害)。抗うつ薬を服用している方のおよそ半数に何らかの性機能の変化が見られると報告されています
感情が平板になる感覚
効果が現れるまでに数週間かかり、その間も飲み続ける必要があること
ケタミンには、これらとは異なる特徴があります。
効果が投与から数時間〜数日で現れることがあると報告されています
体重増加や性機能障害は、ケタミンの主な副作用としては報告されていません
毎日服用する薬ではなく、医師の管理下でのセッションとして行います
ただし、ケタミンにはケタミン固有のリスクがあります。セッション中の現実感の変化や血圧の上昇、吐き気などの一過性の症状に加え、頻回・長期に使用した場合には膀胱への影響や依存の問題が知られています。当院では回数と間隔を計画的に管理し、こうしたリスクを抑えながら実施しています。詳しくは「リスク・副作用について」をご覧ください。
なお、KAPは今の薬をやめることを前提とした治療ではありません。服薬中の方は、主治医の先生と連携しながら進めます。ご自身の判断で薬を中止することは、どうかなさらないでください。
ケタミンは麻薬及び向精神薬取締法の対象薬剤であり、その取り扱いには厳格な管理が求められます。当院では、麻薬施用者免許を保有する麻酔科医が、法令に基づいてケタミンを施用・管理しています。
セッション中は医師が常に付き添い、体調の変化を見守ります。麻酔科医として培ってきた全身管理の経験を、安全なセッションの土台としています。

KAPの効果は、薬だけで決まるものではありません。どんな環境で、誰に見守られ、どんな音のなかで過ごすか——「セット(心の準備)とセッティング(環境)」が、体験の深さと安全性を大きく左右します。当院では、この60〜90分のためにセッションの環境を設計しています。
点滴のルートを取りません
筋肉注射で行うため、腕に針やチューブが留置されたままになることはなく、身体を自由にして体験に入ることができます
麻酔科医が終始付き添います
他の患者さんと並行して診ることはありません。
看護師も同席し、医師と2名でお付き添いします。
専用に作曲された音楽
60〜90分、ヘッドホンでお聴きいただきます。体験の起伏に合わせて構成され、途中で途切れることはありません。
大きなベッドとアイマスク
浮遊感のなかで、身体の緊張をほどいていきます。
約30分後に、深さを調整
1回目の注射から約30分後、ご様子に応じて追加の注射を行います。
こうした環境と時間を、一人のために確保する。それが当院の料金の内訳です。

KAPは、1回で完結することを前提とした治療ではありません。
ケタミンをうつ病に用いた海外の研究では、単回投与の効果は多くの場合数日〜2週間程度で薄れていく一方、初期に複数回(4〜6回程度)繰り返すことで効果が積み重なり、持続期間も延びることが報告されています。米国等で治療抵抗性うつ病に承認されているエスケタミン点鼻薬も、「導入期は週2回、その後は間隔を空けて維持する」という段階的な設計になっています。
当院ではこうした知見を参考に、KAPを次の流れで行うことを基本としています。
必要な回数には個人差が大きく、少ない回数で十分な手応えを得られる方もいらっしゃいます。あらかじめ回数をお約束することはなく、また漫然と回数を重ねることもいたしません。ケタミンは麻薬及び向精神薬取締法上の麻薬に指定されており、当院では麻薬施用者免許を保有する医師が、依存・乱用のリスクに配慮しながら計画的に施用・管理しています。
※ケタミンの本適応での使用は国内未承認(適応外使用)です。詳細は「未承認医薬品・適応外使用について」をご覧ください。
参考文献を表示
Berman RM, et al.
Antidepressant effects of ketamine in depressed patients.
Biol Psychiatry. 2000.
Zarate CA, et al.
A randomized trial of an N-methyl-D-aspartate antagonist in treatment-resistant major depression.
Arch Gen Psychiatry. 2006.
aan het Rot M, et al.
Safety and efficacy of repeated-dose intravenous ketamine for treatment-resistant depression.
Biol Psychiatry. 2010.
Murrough JW, et al.
Rapid and longer-term antidepressant effects of repeated ketamine infusions in treatment-resistant major depression.
Biol Psychiatry. 2013.
Phillips JL, et al.
Single, repeated, and maintenance ketamine infusions for treatment-resistant depression: a randomized controlled trial.
Am J Psychiatry. 2019.
Daly EJ, et al.
Efficacy of esketamine nasal spray plus oral antidepressant treatment for relapse prevention in patients with treatment-resistant depression: a randomized clinical trial.
JAMA Psychiatry. 2019.
初回KAPプログラム(税込)
内容
料金
(税込)
初回相談・適応評価
Preparation(準備)
KAP Session(セッション)
Integration(統合)
合計
2回目以降のKAPセッション:187,000円〜(税込/KAP Session 165,000円+Integration 22,000円。2回目以降も統合セッションを必ず行います)
すべて自由診療(保険適用外)です。
KAP Sessionのみの単独提供は行っていません。
治療の期間・回数には個人差があり、ご相談のうえ個別にご提案します。

KAPを受けられない方
妊娠中・授乳中の方
コントロール不良の高血圧や、心血管疾患のある方
重い肝疾患・腎疾患のある方
精神病性障害の既往のある方、現在躁状態・軽躁状態の方
物質使用障害が継続している方
ケタミンに過敏症のある方
個別に判断する方
双極性障害などの気分障害のある方(主治医の先生との連携を前提に、条件付きで適応を判断します)
ベンゾジアゼピン系薬剤を服用中の方(事前の調整のうえ、慎重に実施します)
甲状腺疾患、けいれん性疾患、睡眠時無呼吸のある方
該当するかどうか分からない場合も、初回相談でお気軽にお尋ねください。
セッション中〜直後
セッション中〜直後に、以下のような症状が現れることがあります。多くは一過性で、時間とともに軽快します。
吐き気、めまい、ふらつき
血圧・心拍数の上昇
現実感の変化、不安感
眠気、倦怠感
頻回・長期にわたる使用の場合
次のリスクが知られています。当院では回数と間隔を計画的に管理することで、これらを抑えています。
膀胱への影響(頻尿・排尿時の痛みなど)
依存・乱用
記憶や注意への影響
セッション中は医師が付き添い、体調を継続的に確認します。セッション当日は、お車・自転車の運転はできません。
ケタミンは、日本国内で麻酔薬として承認されている医薬品です。
一方で、心理療法と組み合わせて用いること(KAP)や、うつ症状などの精神的な不調に対する使用は、国内で承認された適応ではありません(適応外使用)。soma clinicでは、この位置づけを初回相談・適応評価の際にご説明したうえで、医師が適応を判断しています。
入手経路について
当院で使用するケタミンは、国内で承認され、正規に流通している医療用医薬品です。個人輸入等による医薬品は使用していません。
国内の承認医薬品について
ケタミン注射薬は、麻酔・鎮痛の領域で国内承認を受けています。心理療法との併用や精神的な不調に対して承認された同一成分の医薬品は、国内にはありません。
諸外国における状況について
米国では2019年に、ケタミンの光学異性体であるエスケタミンの点鼻薬が、治療抵抗性うつ病に対して承認されています。ケタミンの注射投与および心理療法との併用(KAP)は、米国においても承認された適応ではなく、医師の判断のもとで提供されています。効果や体験には個人差があり、すべての方に有効とは限りません。


Q.
ケタミン治療は、うつ病以外にも使えますか?
Q.
精神科の診断を受けていなくても相談できますか?
Q.
点滴のケタミン治療とKAPは何が違うのですか?
Q.
効果はどのくらいで現れますか?
Q.
何回受ければよいですか?
Q.
副作用はありますか?太ったり、性機能に影響したりしますか?
Q.
現在通院中・服薬中でも受けられますか?
Q.
初回相談だけ受けて、治療をしない選択もできますか?
Q.
ケタミンは違法な薬物ではないのですか?
Q.
セッションは怖くありませんか?
Q.
保険は使えますか?費用はいくらですか?
最初の一歩は、1時間の相談から。
初回相談・適応評価は11,000円(税込)、オンラインでも受けられます。あなたのテーマを、まず聞かせてください。



